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 脇道の近くに行くと伸二と亮は立ち止ってその先の様子を見た。急に立ち止ったため、後ろを歩いていた人がぶつかりそうになったのか、二人の横を通り過ぎる時睨みつけてきたが何も言ってこなかった。  脇道の先では若いサラリーマンが数人に囲まれている。暗くてよく分からないが、年齢はおそらく亮と伸二の間で女も混じっている。暗闇の中でも柄の悪さや品のなさは隠せないのだなと伸二は新たな発見をした気分になった。 「カツアゲされてるみたいだ」伸二は見たままのことを言った。 「どうする?」 「どうする?」伸二は思わぬ亮の言葉に無意識に復唱してしまった。「ほっとけばいいだろ。今さら警察呼んだって間に合うわけないしさ」 「助けてみないか」亮の顔は楽しげだ。 「無理だって。あれ多分、四、五人はいるよ。兄貴、喧嘩なんか出来ないだろ」 「いいじゃん。楽しそうだし」亮は既に歩き出していた。 「ちょっと待てって」かんべんしてくれと思いながらも伸二はついて行く。  近くで見るとやはり五人いた。男が三人で女が二人だ。近づいてくる伸二と亮には途中で気が付いていたものの、初めは無視していたのだが、さすがにすぐ近くで立ち止まられるとそうもいかないみたいだ。 「何だよ」と色黒の男が凄めるような声を出した。 「何してんの?」亮は友達にでも話しかけるような口調で言う。 「こっちが訊いてんだよ」今度は茶髪の男が言った。 「こっちも訊いてんだよ」亮は動じない。 「関係ねえだろ」色黒の男は少し苛立っている。 「いや、関係があるかどうかなんて訊いてないって。何してるか訊いてるんだけど」 「お前ふざけてんのか」と鼻ピアスの男が亮に掴みかかってきた。 「ちょっとやめなよ」伸二はたまらず間に入った。 「何だよ、お前」鼻ピアスが伸二を怒鳴りつけた。 「でかい声出すなよ。誰か来たらどうするんだよ」茶髪が鼻ピアスを諌めた。  もう既に何人もの人に目撃されてるよ、と教えてあげたくなったが意味はないと思いやめた。
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