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「カツアゲか?」亮は包み隠すこともなく訊いた。
「うるせえな。関係ねえだろ」色黒がまたしても同じことを言った。
「だからさっきも言ったけど、関係あるかなんて訊いてないって。少しは学習しろよ」
「ああ?」鼻ピアスがもう一度亮に掴みかかった。
「あのな、サラリーマンって言ったってこんな若い奴捕まえても大して金なんて持ってないぞ」と亮は隣で固まっているサラリーマンを親指で指した。「お前ら、本当に頭悪いな」
「何だと」鼻ピアスは亮を持ちあげようと掴みかかった手を上げたがもちろん持ち上がらない。
鼻ピアスは殴りかかるタイミングを掴みかねているのだろうなと伸二は思った。しかし、このままでは確実に二人とも殴られるのは分かっていた。これ以上挑発するのはやめてそろそろ帰らないかと言いたかった。
しかし、「それにな」と亮は挑発をやめる気配はない。「お前いくつだよ? 高校生じゃないよな。いい年して、いつまでも養ってもらって恥ずかしくはないのか?」
「養ってもらってねえよ。自分でバイトしてるっての」
「そんなこと言ってんじゃねえよ。お前はやっぱり頭が悪いんだな」亮は嘲笑する。「まだ親に養ってもらってる奴の方がよっぽどましだよ。いいか、こいつの金はこいつが働いて稼いだ金なんだよ。だから、お前がその金を貰うってことは結局こいつに養ってもらってるってことだ。分かったか?」
「わけ分かんねえこと言ってんじゃねえよ」我慢の限界が来たのか、茶髪が亮のふとももの辺りを蹴った。
「いてえな」と呟いたが特に気にするそぶりはない。「だいたいお前ら税金払ってないだろ。社会全体に養ってもらっるんだからもっと大人には礼儀を持つべきだな」
「うるせえんだよ」怒鳴りながら鼻ピアスが殴りかかったが、襟元を掴んでいるとはいえ、そうそう人の顔に拳は当たらない。しかも今から殴りますよ、と言って殴りかかっているようなものなので尚更だ。
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