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「どうした?」
「あいつ、サラリーマンだろ。スーツ着てたし。社会人になっても、礼の一つも言えないようじゃダメだろ」
「社会人って言ったって色々いるさ。お前も大人になれば分かるよ。大人って子供が思ってるほど何でも出来るわけじゃない。俺自身大人になってからそれを感じてる」
「でもお礼ぐらいは子供でも言えるよ」
「それが難しい大人だっている。誰にだって得意不得意はあるもんだ」
「何か納得出来ないなあ」
「お前はまだ子供なんだ。そのうち、大人って大したことないなって思えるようになるさ。そうなったら、お前も大人になったってことだ」そう言って亮は立ち上がった。「そんなことより早く牛丼食べに行こうぜ。腹減った」
「牛丼ってしみるのかな」伸二も立ち上がる。
「七味かけなきゃ大丈夫じゃないのか」
「普通七味なんてかけないって」
「お前はやっぱり子供だ。あれかけなくてどうするんだよ」
「どっちでもいいよ。でもサラダは無理だな」
「それは間違いないな」
二人で来た道を引き返した。ビルの間を通り抜ける風は少し肌寒かった。しかし、体中のあちこちに感じる痛みを洗い去ってくれているようで気持ち良かった。
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