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「わあ。どうしたの、その顔。喧嘩でしょ、喧嘩」学校に着くなり松本が話しかけてきた。
伸二は予想通りの面倒くさい問いかけをされたことに辟易した。
朝起きて鏡の前に立って自分の顔を見た時は学校を休もうと思ったのだが、亮が、別に悪いことをしたわけじゃないんだから堂々としてろよ、と言ったので結局行くことにしたがやはり失敗だったかなと少し後悔した。
「喧嘩じゃないよ」伸二は手で殴られた箇所を隠すようにして自分の席に着いた。
「じゃあどうしたの? 思いっきり殴られてるじゃん」
どう答えようかと少し考えたが、特に良い答えが見つからなかった。「ちょっと巻き込まれた」とだけ答えた。
「巻き込まれたって何に?」松本の興味は依然衰えない。
「兄貴に」
「荻野君ってお兄さんいたっけ?」
「性質の悪い兄貴がいるよ」
「で、どうしたの?」
少し話題が変わったかと思ったがすぐに元の話題に戻された。
カツアゲされていたサラリーマンを助けてボコボコにされたなんて、みっともなくて話したくなかったが、どう逃げても絶対に離してくれそうもないので、昨日あった出来事を話すことにした。
聞き終えた松本は、ふうんとつまらなさそうに相槌を打った。
「何それ? そっちが訊いてきたから答えたんだけど」
「結局負けちゃったんでしょ? 普通助けに入った方が勝たなきゃいけないのに」
「知らないよ。俺たち普段から喧嘩とかしないし」その前に普通って何だと訊きたかった。
「やっぱり荻野君って不良じゃないんだね」
「どう見てもそうだろ」
「お兄さんは何で助けようと思ったの?」
「さあね。少し変わってるんだよ」
「少しじゃないと思うけど」
「時々変な思いつきで行動するんだよな。いつもは頭いいのにさ」
「だいたいデートのお金をカツアゲしてもらう女ってどうなの? 安っぽすぎるでしょ」
「それは俺もそう思う」
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