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 そろそろこの話題を切り上げたいのだが、チャイムが鳴るまであと五分ほどある。とにかく話をそらそうと思い、「今日は宿題やったの?」と訊いた。 「え? 荻野君が見せてくれるんじゃなかったの?」松本は心底驚いた顔を見せた。 「え?」と伸二も驚く。 「昨日見せてくれるって言ったじゃん。だからあたしやってきてないよ」 「いや、あれは昨日の話だろ」 「そんなこと言わなかったじゃん。見せてくれるって言うからやって来なかったのにどうするの? あたしだけ怒られちゃうじゃん」 「今からやれば間に合うって」 「無理無理」と松本は手を振る。「あたし頭悪いもん」  昨日は部活が忙しいとか言ってなかったっけ、と昨日のことを思い返していたら追い打ちをかけるように、「どうするの?」と訊いてくる。 「分かったよ。見せればいいんだろ。でも俺もまだ出来てないからな」 「うん。昨日みたいに終わってから見せてくれればいいから。頑張ってね」と昨日と同じ目一杯の笑顔で応援してくれた。  松本と会話するとどこかに必ず一度穴に落ちたら這いあがれないアリ地獄のようなものが存在していて、そこに落ちないように注意しなければならないということを伸二は自分に何度も言い聞かせた。
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