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バイトまでに多少の時間の余裕はあったが、かと言って家に帰ってゆっくりしている時間はない。
なので、バイトの休憩室で時間を潰すことにした。
休憩室には中村がいた。
とりあえず、「おはようございます」と言って中に入った。
「早いね。今日五時からだっけ?」
「そうですよ。でも家に帰る時間もないし、来ちゃいました」
「ところで、その顔はどうしたの?」
中村は伸二の顔を指差す。
「兄貴のせいですよ」
「何? 兄弟げんか?」
「違いますって」
つい、何回もこの説明をしたので世界中の人が事情を知っているかのような勘違いをしていることに気付いた。
「喧嘩に巻き込まれたんですよ。兄貴がカツアゲされてる奴を助けようって」
「へえ。かっこいいじゃん」
「そうですか? 結局ボコボコにされちゃいましたよ」
「そんなことは大事じゃないんだって。その人助かったんでしょ?」
「俺らがボコボコになってる間に逃げやがった」
「ほら、良かったじゃない。助けようと思った人が助かったんだから」
「でも、お礼も言わず逃げて行きましたよ」
「そりゃそうでしょ。その場にいたらまた捕まるかもしれないんだから」
「兄貴と同じこと言いますね」
「誰だってそう思うよ。お兄さんもそうなることが分かってたんでしょ」
「俺たちが身代わりになるから、そのあいだに逃げろってことですか?」
「そうじゃないの?」
「何かかっこいいのか、悪いのか分からないですね」
「どっちでもいいんじゃない」
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