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 バイトに入る前に中を覗いてみると、まだ5時にも関わらずかなり混んでいた。今日から始まるドリンクバー無料キャンペーンのせいだろう。  今日は忙しそうだなと伸二は少し憂鬱な気持ちを抱えながら厨房に入った。  いつもならこのぐらいの時間は仕事なんてほとんど無いのに、すでに洗い場にはいくつか皿が積まれている。  今からこれだとピーク時のことを考えると気が重くなった。 「おはようございます」  伸二は店長を見かけたのであいさつをした。 「おはよう、今日は忙しくなりそうだぞ。頑張ってな」  店長は伸二とは対照的にこれから来る忙しさを待ちわびている様子だ。  店長がやる気を漲らせた足取りでホールに出て行った後、すぐに中村が近づいてきた。 「ねえ、見た、あのやる気? 別に忙しいのはいいんだけど、少しはこっちに還元してほしいよね」 「まあ、たまにはいいんじゃないですか? ?何もしてない時だって時給が発生してるし」と伸二は心にも無いこと言った。 「本当はそんなこと思ってないくせに」 「あっ、ばれました?」  店長は悪い人ではないと伸二は思っている。  少し正直すぎるような気もするし、そのためか周りの空気を感じられていないような時もあるが、何と言っても高校一年生の伸二を雇ってくれている。  いろんなところの面接受けたが、年齢や保護者が亮になっていることからどこにも雇ってもらえなかった。  しかし、店長は伸二の環境を理解した上で雇ってくれた。  そのことに伸二は感謝しているから、多少のことでは嫌いにならない。
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