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「僕の代わりに皿洗いやってくれてるんじゃなかったんですか?」
伸二は数式から目を離さずに言った。
「ああ、もうほとんど終わったよ。ああ、疲れた」
店長は伸二の向かいに腰を下ろした。
伸二は絶対に嘘だと思った。
おそらく洗い場に戻れば、流しに大量の皿が残っているだろう。
「宿題か? 大変だな」
「まあ、仕方ないですよ。まだ高校生ですし」
「そこ、間違ってるぞ」
店長は伸二のノートを指差した。
「え?」
伸二は思わず顔を上げる。
「ほら、ここだよ。もう一度計算してみなよ」
伸二は店長が指差している問題を見た。
そして頭の中でやり直してみると、店長の言うとおり間違えていた。
「え、何? どうしたの?」
「あ、いや」
伸二は無意識のうちに店長の顔をじっと見ていた。
「ありがとうございます」
「俺に勉強なんて教えられたくないってか」
店長は嬉しそうに笑った。
「いや、意外だなと思って。わざわざ僕の宿題なんて手伝ったって何の得もしないのに」
「お前は少しひねくれすぎてるんだよ。でもその分、純粋ってことでもあるんだがな。もちろん、損得勘定だけで動く人だっている。だけど、そうじゃない人間だっているんだ。お前から見て俺はどう見える?」
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