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「何ですか、それ」
「そのままだよ」
「そのままって。嬉しかったとかそういうことですか?」
「俺たちにとっては待望の子供だったからな。そりゃ嬉しかったよ。でも、やっぱり怖いんだよ。今まで何年も二人で生活してたのにそこに新しく家族が増えるんだぞ。これを恐怖って言っていいのかは分からないけど、同じ家族でも嫁と子供は違うだろ。嫁だって俺が一生養っていくわけだけど、一人で立っていられる立派な大人だよ。でも子供は俺たちで支えてあげなきゃ立っていられないんだよ。嫁に抱えられてる子供を見た時は本当に怖くなったね。まあ、でも家に帰って子供の顔を見るのが今の俺の唯一の楽しみだけどな」
「それが子供が生まれたって気持ちですか」
「そうだよ。そうとしか表現できないだろ」
「確かにそうですね」
伸二は頷いた。
「子供にはどういうふうに育ってほしいですか?」
「普通でいいよ。特別なことは望んじゃいないさ」
「子供が大きくなって、僕みたいに親がいない子と仲良くしていたら嫌ですか?」
「どうした? 何かトラウマでもあるのか?」
店長が怪訝そうな顔をする。
「昔に言われたことがあるんですよ。親が死んだから、僕と仲良くしちゃ駄目だって親から言われたって。まあ、親が離婚してたってのもあったと思うんですけど。でも、僕からしたら全く意味が分からないんですよ。今になっても。だから親としてどう思うのかなと思って」
「そりゃその親が言うことが正しいんだろ。特に俺らより上の世代からしたらそうなるんじゃないのか」
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