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「まあ、そうですよね」  伸二は特にがっかりすることもなかった。  その事実は変わらないことは分かっている。  ただ、納得出来る答えが欲しかった。 「子供ってのは親の影響を一番受けるんだよ。相対的に言って、まともな親に育てられた子供と、どうしようもない親に育てられた子供と、どっちの方が非行に走りやすいと思う?」 「どうしようもない親に育てられた子供でしょ。それぐらいは分かりますよ」 「そうだ。親からしたら、子供にはまっとうな道に進んでもらいたいもんだ。だから、仲良くするなって言うのは正しいんだよ。リスク回避っていう意味でな」 「僕はリスクってことですか」  伸二は自嘲の笑みを浮かべる。 「がっかりしたか?」 「いいえ。昔から慣れてますから」 「でもな、これはおっさんの綺麗事だと思って聞けよ。俺の子供には大きくなった時、周りがこう言うからとかじゃなく、一番大事なものだけを見て、自分で考えられる人間になってもらいたいな」 「綺麗事ですよ」  伸二はいい歳をした大人の青臭い台詞に自然と笑みがこぼれた。 「そうだな。綺麗事だ。世の中にそんな人間はいない。俺を除いてな」  店長は、がははと大きな声で笑う。  伸二は、自分の一番大事なものとは何だろうと考えた。  それを見つけることが出来る人がいればこの先の人生が変わるのだろうか。
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