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「黒田が関わっていたら、俺はこんなところにいねえよ」
前田は馬鹿にしたように言う。
「でも、まずいやつには変わりない」
「どうするんだよ」
「一応、金で折り合いはついた」
「いくら?」
「十万」
「十万?」伸二は驚いて聞き返した。
「妥当な額だよ。原付盗んだんだから」
「いや、原付は返したんだろ」
「それで、はい、そうですか、って引き下がるような奴じゃねえよ」
前田は、またしても馬鹿にしたように笑った。
「で、誰なんだよ? そいつは」
「どこにでもいるただの不良だよ。ただの不良だけど、問題があるとしたらそいつの仲間の多さだな。さすがに俺もそいつらに逆らおうとは思わない」
「何人ぐらい?」
「分からねえ。ただ、そいつはもともと有名な奴だからな。仲間が多いのも知ってる。これは逆らわないほうが無難なんだよ」
「それで何に悩んでるわけ?」
「どうやって十万用意するのかってことと、どうすればこれで終わらせられるのかってこと」
「え? 十万で話はついてるんだろ」
「お前は本当に何も分かってねえな。まあ、知らないほうが幸せなんだろうけど。いいか、十万用意しろって言われて、ぱっと用意できる奴をああいう奴らはほっとかねえよ。言わば、これは試験なんだよ。どれぐらい金を用意できるのか見極めてるんだ」
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