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「英語の課題やった?」 「やってない。授業中にやれば間に合うでしょ」 「なんだぁ。荻野君もかぁ」松本は心底残念そうな声を出した。 「俺の写すつもりだったの?」と伸二は分かりきっていることをあえて訊いた。 「だって、荻野君頭いいじゃん」 「いや、そういう問題じゃないだろ。ちゃんと自分でやりなよ。そんなに難しくないし」 「それなら俺の見してあげようか?」と白坂が陽気な雰囲気を出して会話に入ってきた。  しかし松本はきっぱりと、「いい」と断った。「だって白坂君の写すと成績下がるじゃん」 「何だよ。せっかく人が親切で言ってんのに」  白坂は不貞腐れたような顔になるが、初めからこうなることが分かっていたのだろう。そこまで気落ちしている様子はなかった。 「じゃあ、荻野君。終わったら回してね」と松本はわざとらしい目一杯の笑顔を見せてきた。もしかしたらこの娘なら亮でもお金をとれないのではないかと思わされた。 「自分でやっても十分間に合うって」 「無理無理」と松本は素早く手を振った。「あたし、部活で忙しいんだよ。授業中ぐらい休まなきゃ死んじゃう」  テニスラケットのケースらしきものが松本の机の横に見えたので、「テニス部だっけ?」と訊いてみた。  すると松本はむくれて、「ひっどーい。こないだバトミントン部って言ったよね?」と言ってきた。 「いや、聞いたことないって」 「いや、絶対言った。あーあ、これは宿題見せなきゃダメだな。うん、そうでもしなきゃ許してもらえないな」  伸二はもう勝ち目はないと悟り、「分かったよ」と言って諦めた。 「さすがぁ。やっぱり荻野君は優しいね」  白坂がにやにやしてこちらを見ていたので伸二は、「何だよ」と言った。 「楽しそうだな」と白坂が明らかにからかっている顔をしていたので、そうだろ、と相手にしなかった。
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