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暫く見送って実澄様を乗せた車が見えなくなってから、私は屋敷の中へ急いだ。
懐から出した懐中時計にちらりと視線を向けると、実澄様が出て来られてから5分経っていて。
もう誰も居ないかと思いつつも確認の為に食堂へ行くと、丁度出て来た若様と出会った。
若様は旦那様のご嫡子で、旦那様の会社を継ぐ為に日々精進なさっておられるのです。
「若様、おはようございます。本日は会社に行かれるので?」
姿勢を正して声を掛けると、若様はいつもの柔らかい笑みをお浮かべになる。
「今日は腐男子サークルのイベントだ。帰りは遅くなる」
……若様は奥様の血を色濃く受け継いだらしく、腐男子だと公言してらっしゃる。
流石の私も、この言葉には一瞬反応が遅れてしまいます。
「……畏まりました。夕食は取っておきましょうか?」
それでも返答するのが執事というもの。
玄関へ浮足立った様子で歩を進める若様に、私は通常通りの対応を心掛ける。
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