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「あの…國木田君。」
横から声が聞こえたので、視線をそちらに向ける。
俺の席は、廊下側の前から3番目。
隣の席は亜矢斗。
誉に話しかけたのは浜津亜矢斗である。
「どうした…?」
「なんで…月島先生が自己紹介…しただけで…クラスの子は騒いでるの?」
流石、天然である。
この状況にいまいちついていけないらしい。
「ハァ…こいつらが異常なだけだから、亜矢斗は何も知らなくていいぞ。」
溜め息を吐いて、亜矢斗の頭を軽く撫でた。
「…?なにそれ…ボクにも…教えてよ。」
亜矢斗が頬を膨らまして、俺をじーと見つめる。
な に コ ノ 可 愛 い 生 物///
亜矢斗の表情を見て、俺は胸がドキドキした。
「どうしたの?…國木田君…顔赤いよ?」
そう云って、亜矢斗は俺の顔を覗き込んできた。
(顔近い…!)
「!!!」
俺は内心焦りまくり、上擦った声が出そうになったので、慌てて口を手で押さえた。
「熱は…ないみたい…だね。念のために…保健室…行く?」
俺のおでこに手を当てて、熱があるか確かめた亜矢斗。
亜矢斗の手はちょっと冷たくて、気持ち良かった。
ずっとこのままの状態でもいいかも・・・
そんな事を思い、俺の顔はニヤける。
絶対誰かが見たら、いま俺の顔はキモイと思う。
「彼奴らなに朝からイチャついてるんだぁ?」
「見せつけるなよな…」
「リア充はタヒね!!」
そんな声が後ろから聞こえるが無視。
羨ましいんだろ、お前等?
お前等の愛しの亜矢斗様と俺が良い仲なのがッ
亜矢斗が自己紹介した時、クラスの連中は目を輝かせて歓喜していた。
“可愛い奴発見”
“俺のものにしちゃお”―と云っていたのを俺はバッチリ聞いていた。
そんな事は俺がさせない。
こいつらの餌食にはさせない。
そんなクラスの連中を見ても、当の本人はキョトンとしていたが。
相変わらずの天然…。
その頃世菜はなにをしていたのかというと..
亜矢斗,誉を交互に見ながら、その様子に呆然としていた。
世菜の心境は複雑だった。
二人が良い雰囲気で、嫉妬する自分。
でも亜矢斗は友達だから、別にいいと思う自分もいる。
「ハァー…。」
溜め息を吐くばかり。
世菜は真ん中の前から二番目の席で、横目で見ていた。
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