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「おーい、早く来いよ、ウィル! シズ!!」
「なぁ、何処に行くつもりだよ、レックス」
「……今日は雨が降るぞ?」
此処は三大国の一つ、中立国エスリアの領内にある小さな村──風車村リール。
そこで三人の十六、七程度の少年達が話をしながら走っていた。
「大丈夫だって!すぐ済むから!!」
赤い髪を風に揺らしながら先頭を走っているのは、ヒューマンの少年──レックス・ドラグニエ。
リールにある鍛冶屋の一人息子だ。
「ふーん……まぁ、暇だし付き合うよ」
次に口を開いて目にかかった美しい金色の髪を指で軽くどかしたのはエルフの少年──ウィムルス。
リールの村長の孫であり、村に預けられている精霊の付き人──【御子】と呼ばれる役割を担っている少年だ。
「……濡れても、知らないからな……」
最後に感情があまりこもっていない声でぼそりと呟いたのは風の精霊──シズティオラ。
約十八年前からウィムルスの家に預けられている精霊で、二人とは昔馴染みである。
「シズは心配性過ぎるんだよ!大丈夫、大丈夫」
変わらず先頭を走りながらお気楽に言うレックスにシズティオラは銀色の眼をスっと細める。
「お前の大丈夫は……大抵大丈夫じゃない」
「あ~確かに。この前、木になってたリンゴを取ろうとした時も散々大丈夫って言っときながら結局落ちたしね」
その言葉にウィムルスも苦笑を浮かべ賛同した。
「あ、あの時はいきなり大風が吹いたから……!!」
「もうすぐで強風が来るって……伝えたよな?」
「うっ……」
それにレックスは必死に食い下がったが、ズバっと放たれたシズティオラの一言に黙り込む。
「はい、レックスの負け」
そんな二人のやり取りを見て、ウィムルスは小さく笑うのだった。
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