第三章 帝国とシルバーエルフ

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「あの……ありがとうございました」 「いや、お粗末な物で済まなかったな」 「や、でも美味しかったし……ほら、ウィルとシズも御礼くらい言えよ」 「……どうも」 「……助かりました……」 サンドウィッチを食べた後、四人は個人差が多少はあったものの、青年にお礼を述べた。 「えっと、それで、あの……」 その後、この際いろいろと訊こうとレックスは口を開いたが、相手の名前を知らない事に漸く気が付き、言葉を濁す。 「あぁ、そう言えば……名前をまだ名乗っていなかったな。 私はアンダーテイカーだ」 すると、レックスのそんな気持ちを読み取ったかのように青年は自己紹介をした。 「アンダーテイカー……葬儀屋……?」 「ああ、そう呼んでくれても構わない」 「それ、名前って言うより呼び名じゃない?」 「そうだな」 怪訝な表情でされたウィムルスの指摘を、アンダーテイカーはあっさりと認める。 ウィムルスはそんな彼を呆れたように見据え、問い掛けた。 「いや、そうだなって……それで良いの?」 「実際、私は葬儀屋だ。 それ以下でもそれ以上でもない……それに、名など個体認識さえ出来れば何でも良いだろう」 「じゃあ、アティで」 どこか冷めきった様子でアンダーテイカーがそう断言すると、唐突にレックスがそんな事を言った。 「〝アティ〟?」 「呼び名だよ、アンダーテイカーは長いし、葬儀屋って呼ぶのは抵抗あるからさ。アンダーテイカーを略してアティ」 首を傾げるアンダーテイカーに「別に良いだろ?」と言って、レックスはアンダーテイカーを見据え返す。 「別に構わんが……お前は大物だな」 それにアンダーテイカー──アティは少し驚いたように目を見開いたが、当人のレックスはキョトンとした。 「大物って……何が?」 「まさか、会って間もないヒューマンの子供に呼び名を付けられるとは思わなかった」 「確かに……普通は思わないかも?」 「ってゆーか、まず付けようなんて考えないよ」 「……確実に思わない」 アティの言葉にルーリエが苦笑しながら、ウィムルスとシズティオラに至っては若干呆れながらそれに賛同する。
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