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「そのエネルギーとは妖精(エレメル)の事だが、精霊の加護……ひいては自然の無い地では、妖精は生まれない」
「そりゃあそうでしょ。精霊が生み出す自然によって妖精は生まれるんだから」
アティの言葉に、ウィムルスは「自業自得だ」とでも言いたげに答える。
それにアティは小さく頷いた。
「そう……その為、自然の枯渇はそのままエネルギーの枯渇に繋がる。 そうしてエネルギーが枯渇した帝国は、とうとう禁忌に触れた」
「……禁忌……?」
「妖精の代わりにその大元である精霊を捕らえ、強制的にエネルギーを生み出す、と言う禁忌だ……」
「……それが【精霊狩り】……」
「ああ……」
確認するように呟くシズティオラにアティは頷いた。
「馬っ鹿みたい! そんなの、機械だらけの生活を捨てれば良いだけじゃん!!」
「それがヒトの難しいところだ。 一度繁栄を手にすると、手放す事が出来なくなる」
「何それ! ただの甘えだろ!!」
「お、おい……ウィル。 少し落ち着けよ」
話が進むにつれ、ヒートアップして行くウィムルスをレックスが宥める。
「だってさぁ!!」
「ウィル、少し落ち着こうよ……アティさんを責めても仕方ないでしょう?」
「そりゃあ……そうだけど……」
「……アティは俺達の恩人だ……この帝国で何が行われているかもちゃんと説明してくれた……。少なくともこのヒトを責めるのは……このヒトだけを責めるのは違う」
「……分かったよ……」
ルーリエとシズティオラの二人にも宥められ、漸くウィムルスは気持ちを落ち着かせた。
「済まないな……良ければ今日は泊まっていくと良い。 どうせこんなボロ葬儀屋に客なんて滅多に訪れないから」
「あ……ありがとうな!アティ」
「……感謝、する」
「ありがとう、アティさん」
「……ありがと……あの……」
レックス、シズティオラ、ルーリエがアティにお礼を述べた後、ウィムルスも罰が悪そうにお礼を述べる。
「……さっきは、ごめんなさい……」
そして申し訳なさそうに、アティへと頭を下げるのだった。
「いや、謝罪の必要はない……こちらこそ、大して力になれなくて済まないな……ありがとう」
そんなウィムルスにアティはフッと、どこか悲しげに、けれど優しく微笑むのだった。
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