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周囲が漫才と断言している言い争いの中、つけたまま放置されたテレビではニュースが流れ始めていた。
「あー。暴れん坊大将終わっちゃったよー。」
「見ないでプラモデル作っているからですよ。」
ニュースでは今流行りのパン職人の特集を放送していた。アナウンサーの大袈裟なで身振り手振りで紹介されていたのは、中年の小太りな男性だった。
中年の男性は人当たりの良さそうな笑顔を浮かべている。
『今日ご紹介するのはフランスのパン職人!ミック・マルーシュさんです!』
『コンニィチゥワァ。』
独特の片言でアナウンサーと挨拶を交わしている映像が流れていた。
「この人知っています。」
「この小太りの事?」
「小太り言わない。雑誌でも取り上げられる位なんですよ。」
「ほらっ。」と石鍋美奈は週刊雑誌を広げミック・マルーシュ関連のページを茂木雄介に見せた。
そこには人気の高いパンのランキングや、新作メニューなどが掲載されていた。
「うおぉ…。」
茂木雄介は組み立てていたプラモデルを持ちながら、ミック・マルーシュのページを眺めていた。
「コロッケパンあるのか…小太りやるな…」
「だから小太り言わない。ミックさんのパン、凄く美味しいと評判なんですよ。」
テレビに目を移すとアナウンサーが新作メニューのクリームパンを頬張っていた。
『このクリームパン美味しいですね~!パンはフワフワでクリームは濃厚で癖になりそうな味です!!』
『クリィームパン、トテムォジシンアルゥ。』
『流石ミックシェフですね~!このクリームパンは今週の金曜日に発売されます!』
早口なアナウンサーと片言でゆっくりとした口調のミック・マルーシュの掛け合いが終わり次のニュースに移っていた。
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