17人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
大理石でできた床をカツカツ歩きながら無言で進む輝。
その後ろを、最近の政治について語り合いながら二人がついてくる。
迷路のような洋風な作りになっている廊下をぬけ、繊細な飾りを施した大きな扉が現れた。
金の天使があしらってある取っ手を、輝は思いきりよく開いた。
「くるみ…。」
「あ、輝いらっしゃい…と、波木さんと小百合さんも。」
女神とキリストが描かれている色鮮やかなステンドグラスからのびた光を浴びていた彼女、長い髪をハーフアップにし、端正な顔をした山口くるみは、読みかけの本にしおりを挟んで、輝の後ろからひょこりと顔を出した優真と小百合にもおっとりとした挨拶を交わす。
「ごきげんいかがですか?山口さん。」
「こんにちは!くるみさんっ。」
かしこまって一度足を引き、胸にてをあて一礼をした優真と、にっこり笑っててをふる小百合。
「今日は少し調子がいいみたいで、つい図書館まで来てしまいましたの。小百合さんはいつも元気そうですね…あら?輝、いきなりどうしたの?」
体が病弱なくるみは、授業を保健室で受けることが多かった。授業を保健室で受けることができるのは金持ちの特権でもある。
そうした繰り返しの毎日の中で、調子のいい日は図書館に来て輝や優真と話すことが、山口財閥の会長の息女である彼女の唯一の楽しみである。
ちなみに輝はくるみの隣に来て、座ったかと思うといきなり机に突っ伏したのである。
確かにくるみさんも驚くはずよ。それにしても…うらやましい…私も隣で添い寝されたい!
最初のコメントを投稿しよう!