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今、私は激しい拷問を受けている。
「お前は本当に魔王なのか?」
さきほどからこの調子。既に2時間になるのだろうか?
しかもこちらは何故か正座。ヤツは胡座(あぐら)しかも座布団付き。
この扱いの差はなんだ?
客(魔王)をもてなすという事もしないのか?
「ああ、まさかアイツの弟まで身体を取られるなんて…」
金髪の青年は頭を押さえ俯きながら独り言を呟くようになってしまった。
この青年の名前は 水戸 慎一。
どうやら、この身体の持ち主の兄であるらしい。
いや、それよりも何故コイツが私の正体を知る事が出来たのかが気になる。
これが、兄弟として…
家族の愛と言うものなのか?
「出てけ!」
もしや、コイツも……
「今すぐ弟の身体から出て行け! じゃないとテメェをぶっ殺す」
「それはできないな」
私は努めて冷静な声音で否定した。
「貴様も同じなのだろう? 水戸 慎一よ」
金髪の青年は苦虫を噛む様な目で私を睨んだ。
やはり、水戸 慎一という男は存在しない。
いるのは水戸 慎一という名を使う私と同じ異形。
でなければ、何の力もないこの身体の家系に私の魂を見破る事など出来るはずがない。
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