1383人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は白人の親父と日本人のお袋の間に生まれた。俗にいうハーフ。
お袋は親父を溺愛していた。
けど親父は違った。
俺が15の冬、親父は突然いつの間に作った愛人を紹介してきて
俺達と一緒に来ないかと誘ってきた。
お袋はキレると何をするかわからない。
だから逃げるって。
親父に出した答えはNO、面倒だし。
それに俺にはお袋を捨てる理由もない。
俺が16になって間もなく、親父は愛人と逃げた。
お袋はテーブルに残された親父からの置き手紙を読むなり発狂して、包丁片手に夜の街へ飛び出して行った。
朝になって帰ってきたのは警察官だった。
死体がお袋か確認してほしいらしい。
案内された病院の霊安室で死体が横たわっていた。
寝起きで、適当にパーカーを羽織っているだけだったから少し寒かった。
被せられていた布を捲ると、赤く腫れ上がった顔が見えた。
荒々しい形相が凝り固まったような表情。
いつも化粧をして気を遣っていた女の
成れの果て。
『母です』
そう言って俺は死体の頬に別れのキスをした。
ばいばい、可哀想なお袋。
最初のコメントを投稿しよう!