真田 空

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被害者は彼女の恋人……と思われる男。青野 新太郎という彼女よりも2つ上の教師だった。岩波が少なからず憧れていた大竹の尾行に妙に乗り気だったのも、このせいだろう。妬いているのだ、そういうところが幼い。 まだ彼女が犯人と決まったわけではないし、動機は不明。周囲の人間からは近々結婚も控えていたとの情報もあるほど仲は良好だったようだ。死因は撲殺、一撃ではなく何度も打たれていた。遺体を見たわけではないが、それは悲惨なものだったと司法解剖に当たった医師がぼやいていた。 彼女以外に狙われるような存在が見当たらない、それほどに青野は好青年を絵に描いたような人物であった。彼女が犯人ではないとしたならば、外部……となるのだろうか。とにかく、考える側からすればこれほど面倒なことはない。 「あ、先輩。大竹さん、入りましたね」 こちらも確認していた。大竹は一軒の民家の中へと入っていった。インターホンや、ましてノックをすることもなく、躊躇い無くドアを開けその擦りガラスの中へと消えていった。 「どうしましょっか? 待ちます?」 隣で岩波が指示を仰ぐ。何しろ寒いし、ついには雪まで降ってきていて動いていなくては到底耐えられそうにも無かった。 「そうだな…… 周囲を見回って、聞き込むとするか。念のため大竹が動かないかは気を配れよ」
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