真田 空

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恐らく追われていることに相手は気づいてはいないだろう。 前もって上司から渡されていた資料には容疑者の情報がよくもまぁ、これだけ根掘り葉掘り調べましたねと感嘆するほど記載されている。 容疑者は大竹 忍。22歳のうら若き女性。現在では容疑者としか表しようがない彼女だが、経歴には目を見張るものがある。 無名の高校に入学後、1浪もすることなく国立大学へ入学。医学を学び、監察医への道を万進する。特筆すべきは、無類の努力家であり、1年間に常人の3倍以上は司法解剖を行う。 彼女は監察医界の筆頭でありながら真田が所属している須坂警察署の同僚でもあった。 勿論真田や岩波も幾度か会う機会があり、それなりに話もした。実際の印象としては確かに聡明である佇まいではあったが、どこか感覚が浮いている、漂っているような感じを覚えた。 岩波などは何も感じなかったらしく、憧れの情を抱いていたようで、今回の件では非常にごねたものだった。 そうこうしている内に、段々と人気の無い道へと軌跡が続いていく。閑散とした、古い民家が並ぶ住宅街へと向かっていた。 季節は冬。雪こそ降ってはいないものの、寒さは毎日この冬一番の冷え込みが訪れるそうだ。 そのせいか、窓を開けている住宅も少なく、まるで人が住んでいないかのような陰気な雰囲気が出ているかと思ってしまう。 岩波と二人して寒さに震えながら進んでいると、軌跡が止まる。
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