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オレはバスに揺られながらボンヤリと広がる海の景色を眺めていた
ふいに、あの白いバラの花束を思い出した
「くそっ!」思わず呟いた
花束の主と直接には会った事はない
けど話しは聞かされた事がある
白いバラは彼女が一番好きな花だ
そいつは彼女が昔、付き合っていた男
今は弁護士
だが以前は検察庁にいた
いわゆる「やめ検」だ
付き合っていたといってもヤツが学生の頃の話しで、年上の彼女とは政治家のパーティーかなんかで知り合ったらしい
よくある薄ぺらな話しだが大学院生のヤツと政治家の娘であり、その父の秘書だった彼女は
あっという間に惹かれ合った
しかし、現実は甘くはなかった
彼女には決められた結婚が待っていて、父親を裏切る事など出来るはずもない
そういう世界らしい
早い話しがソイツは彼女に捨てられたのだ
だけど、そんな結婚が上手くいくはずもなく
彼女は心と躰のバランスを崩していった
オレがゆり子さんに初めて逢ったのはちょうど、その頃だった
彼女は明らかにおかしかったし身も心もボロボロ
何故、ゆり子さんに心を惹かれたか……
それはオレが、唯一アレルギーを起こさない女性だったからだ
どこから見ても、嫌というほど「女」なのに
何ひとつ女の匂いを感じさせない
オレが惹かれた理由はそれだった
何せ、オレは女性がダメなのだ。
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