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「野島」と書かれたプレートのある部屋の前に立つ
大きく息を吸い込んでドアをノックする
「はい…どうぞ」
変わらない声が返ってきた
ボクはドアを開けデスクに向かっている白衣の人に声を掛けた
「先生、こんにちわ」
するとこちらを向き優しい笑顔で立ち上がると
「やぁ、来たね。そろそろ現れる頃だと思ってたよ…さぁ、座って」
そう言って椅子をすすめてくれた
アンティークのやわらかな手触りのチャーチチェア
そして自分はその向かいに腰掛けた
その椅子は肘掛けがあり細い脚、座面と背もたれに深い深い緑色のビロードのような生地が張られている
百年近く経つというのにとてもキレイな状態で、一目惚れしてしまった
何を隠そう
この椅子はボクがイギリスで仕入れた初めての商品
それを
目の前に座っているこの先生が半ば強引に買っていったのだ
先生とは教師の方でなく医者
彼は
この人里離れた海の見えるホスピスでメンタルケアをしている
精神科の医者である
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