睡蓮のエメラルドグリーン

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「聞きたいこと?」 ボクはハガキを手にとって 「このドレス見たことありますか?」 描かれている人物が着ている衣装を指差した 「さぁ…知らないけど立場上、そういうのは沢山持ってたんじゃないのかな…それに君が描いたんだろ?モデルにこのドレスを着せたのは君じゃないの?」 「一番好きなドレスを着てくれるように頼んだんです…そしたらこのエメラルドグリーンのドレスだった。それとお揃いのエメラルドの指輪」 彼女が何故このドレスを選んだのか本人には聞けなかった その時、仮に聞いていたとしても彼女は答えてはくれなかっただろう 「先生なら知ってるかなって思って…」 「さすがに彼女のワードローブの中までは見たことないなぁ」と笑った 「そうですかぁ…凄く綺麗なドレスだったんですよ。シンプルなんだけど、そうだタイタニックって映画あったでしょ?」 「ディカプリオとケイト・ウィンスレットの出てたやつ?」 「そうそう、あの映画の中でローズがジャックと夜にデートする時に着替えてくるんです。何だかネグリジェみたいな感じのドレスなんですけどね」 「ネグリジェ?そうだったけ?そういえば薄いスケスケのドレスだったかな…」と、また笑った 「それです、それそれ。すごく似合ってたなぁエメラルドグリーンが…本当に綺麗で素敵だった」 ボクはその人の事ならすべて覚えている だけど、この時の記憶だけは特に鮮明な色を放っていた
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