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「あの時?……もしかしてアイツが最後に来た時?」
思わずボクは乱暴な言い方をした
すると
先生は少し哀れむような眼でボクを見て
「そうだよ」と言った
「今年も置いてあったよ。白いバラなんだよな……いつも俺より先に来やがって」
先生の前で「俺」と言ってしまった自分にハッとして後悔する
そんなことなど気にしていないように先生は
「今年も来てくれたんだね」
「嬉しそうだね」
「ああ。彼女が喜んでくれる事なら何だって嬉しいよ…昔も、今もね」
「悔しくないの?」
ボク、いや俺は先生を睨みつけた
「オイオイ、勘弁してくれよ…もう何年も前の事だよ…」
「けど……」
返す言葉に詰まって俯いてしまう
「悔しいね。彼の事も…君にも…嫉妬するよ今でもね」
と静かで低い声で言われ
思わず先生の顔を見た
それはとても悲しい笑顔だった
この人は
この五年間
ずっとこんな顔をして生きて来たんだろうか?
自分のしたことがどれ程に罪深い事だったのかを改めて思い知らされた
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