夢見月

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  大学内の人気の無い場所を探しながら旧校舎に向う   確か旧校舎には今は使われていない空き教室があった筈   僕の後ろを物珍しそうに日中の大学内を坂口先輩の姿であるギンロウは眺めながら着いてきていた   今までと明らかに違う   坂口先輩の姿でギンロウの意思が目覚めるのは今までは僅かな時間…しかも夢心地の様にあやふやな意識だった筈   だが今の状態は ハッキリとしたギンロウの意識を保ち続けている   『坂口先……ギンロウここ入って』   近代的な造りの新校舎の影になって陽射しが遮られた埃っぽい旧校舎は肌寒い   ギンロウは坂口先輩の姿で窓辺に向かって空を見上げる   よほど昼の世界が新鮮に見えるのだろう   夜の世界しか知らないギンロウにすれば昼の世界は異世界の様に思うのかもしれない  
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