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満月が近い
まるで手の届きそうな場所にあるみたいだ
こんな上空を飛ぶのは初めてで オレは苛々した気分が一気に晴れた気がした
カラス天狗はオレが大人しくなったのを確認すると静かに低空飛行しながら 森の抜けた小さな野原に降りた
オレの腰に巻いた腕を丁寧に離し ようやく解放される
『傷口を見せて下さい 早く治療しなければ壊死し腕を切り落とさなければなりませんよ?』
壊死?!
思わずカラス天狗の言葉にビビる
『………』
仕方なくオレは服を脱ぎ右上腕部に出来た傷を見せた
服を脱ぐ時でさえ布に擦られ まるで心臓が脈打つように傷口が痛む
露出した傷口は今朝見たより遥かに腫れあがり紫色に変色していた
カラス天狗はオレの傷口をジッとみつめ手にとる
『少し痛むと思いますが我慢して下さい』
長い髪の毛からすっと取り出されたのは一本の細い針の様なモノ
『やめろっ!』
カラス天狗が毒使いだとオレはフッと思い出し腕を払った
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