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『……カラス天狗には僕から伝えておこう』
統主は気まずい雰囲気で言った
きっと事情は筒抜けなんだろう
少し前のオレなら こんな風に同情されると苛立ちを覚えてた
『聞かれたらで結構です…すみません…何か面倒な事になってしまい…』
素直に頭を下げる
統主は一瞬面食らった表情を浮かべそして頷いた
後ろに控えてるギンロウは特に気にする素振りも見せない
いつもなら人の不幸をニヤニヤと嬉しそうに眺める奴なのに
この二人は知ってる
アヤカシと人間の恋を
きっと この二人も色んな試練を潜り抜けてきたに違いない
オレは統主の部屋を出た
何度も思った事がある
何故オレは統主じゃないのだろう
オレが統主なら…と
でも今は違う
統主でなくても
オレにしか出来ない事があるんだ
オレはツキヨミ
人間を捨てツキヨミとして生涯を生きていく
そう心に決めた
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