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ひょっとしたら、
ひょっとしたら日本での最後の夜になるかもしれないのに…
「愁くん、梅干しや納豆なんて入れなくていいよ~っ」
「だめっ、もう日本に帰ってこれないかもしれないんだよ?」
キャリーバッグに入れるか入れないかで、
蒼くんとちょっとしたケンカ中。
「そんな大袈裟だよ~っ」
「人生何が起こるかなんて分かんないだから」
愁くんは大袈裟すぎる、って嘆く蒼くんは、
どうやら日本に帰ってくる気満々らしい。
だって彼の荷物は、小さなリュックで収まったくらいだから。
それに比べて俺はキャリーバッグ二個。これでも足りないくらいだ。
「とにかく日本が恋しくなったときのために、この富士山のうちわも持ってくよ」
とうとうこんな俺に呆れたのか、蒼くんはソファーのうえで寝っ転がってしまった。
「よし、完璧」
二時間かかった荷造りはようやく終わって、
俺は蒼くんのもとへ行った。
「終わったよ~蒼くん」
「…うっさい」
ちょっぴり不機嫌みたいですが、
日本でいちゃいちゃできるのも、これで最後かもしれないと思うと
なんとも言えない寂しさがこみ上げてきた。
「蒼くんキスしよ~」
「はぁ?」
時間に余裕なんてないんです。
なにせ出発は明日の朝!!
何振りかまわず、蒼くんにキスした。
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