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「はっ?復讐?」
コーヒーをかき混ぜ終わって手にしたスプーンが、呆気なく指の間から滑り落ちた。
目の前にいる彼はニヤニヤ俺を見るだけで、何も言おうとしない。
俺は気を取り直して、落ちたスプーンを再び手にする。
すると彼は足を組み直して続けた。
「ええ、そうですよ?まさか忘れてたんですか?」
ギクりとなって、またスプーンが滑り落ちる。
いや、忘れていた訳ではない。
あまりにも衝撃的だったから、それはもう今だってしっかり脳裏に…って
そうじゃなくて。
俺はただ、
「俺はただ、冗談かと思ってました。」
素直に言っただけなのに、冷たい目で睨まれた。
いや、もう慣れっこですけども。
「冗談?んなわけないでしょ、これだからお坊ちゃんは困るんです。」
かずは俺の手首を握って、時計をマジマジとみた。
これは唯一の親の形見…って別に親がなくなったわけじゃないけど。
一千万ちかくする、高級腕時計らしい。
「まあ俺の傷もほぼ完治しましたし、あれから時間もだいぶ経ちましたから、そろそろやるときかなと…」
復讐を、と今までにないくらいの冷めた笑顔を見せるかず。
どうやら撃たれたことに、相当の恨みを持ってるらしい。
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