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12月24日(土) PM06:24
【新東京市 第3区 センター街】
はぁ、と溜め息をすれば白い霧が零れそうな程に寒い12月。新東京市にも、もはや何度目か解らない冬がやってきた。
とは言っても新東京市では冬に雪が降ることすら珍しいので、あまりに風情がないと言えばそうなのかも知れないのだけれど、一応新東京市では人工的に雪を降らせるかのような装置があるので、楽しめると言えば楽しめる。
人工と解っていてもテンションは大盛り上がりを見せているのだ。
「そっかぁ………今日クリスマスじゃん」
そう呟いた少年は、ようやっとこの時間になって今がクリスマスという事に気がついたのだ。
そういえば青野が「リア充はね、滅ぶべきなもんや」と零していたのはこのためなのか、と納得した。
なるほど、今日はクリスマス。
「あんたね、高校生としてそれはどうなのよ」
「でも春一さんらしいですね」
と、春一の隣で買い物袋をぶら下げながらツッコミを入れたのは元クラスメートである桐生愛と、その妹早苗。
どうやら晩御飯の支度をするらしく、ケーキを作るのだろう、クリームやらを大量に購入していた。
「しょうがないだろ?クリスマスの話題だなんて男同志じゃマジしねーよ?」
「寂しすぎるでしょうが………」
「言うな……」
前田は前田で「あぁ、ま、薄汚れた仕事だぜ」と言っていたし、沖弐は沖弐で「まぁ………妹の世話だろォな。仕事?はっ、んなもん寂しい奴らにやらせりゃいいんだよ」とまで言っていた。
「はぁ………、んで桐生達は家でクリスマスパーティーかぁ」
「まぁね」
「はい、家族みんなでですよ」
なんて言って微笑む2人。
幸せそうだ。
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