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「あ、いや………あの………ハサミと……あと…………」
10秒以上黙った青年、秋月春一を見て、医師は真剣な表情を崩さないまま「それでは次の質問をする」と言った。
嫌に薬っぽい部屋は、確かに新東京市にある中央病院だ。
目の前の女性は素晴らしい黒髪をアップにしている綺麗な人だった。
春一に対する態度は粗雑じゃないかな、とは思ったけどしかし事診察になると目の色が変わったのを見て春一は多少だけホッとしたのだ。
「君は今、何歳だい?」
なんて質問だ。バカバカしい
「18歳です」
秋月春一 27歳 若年性アルツハイマー。
「……………そうか」
疲れたように息をはく女性を見て、春一は首を傾げた。
美人であるがゆえにその顔は少し痛々しいものがあり、そしてそれはほぼ同時に春一を絶望へと落としいれる事だった。
診断
「秋月春一」
「え?……あ、はい」
「それと、あんたは保護者かな、………えっと」
「あ、マリアルです。マリアル=リエルン」
疲れたように微笑んだのは金髪の美少女、マリアル=リエルンだった。
春一と結婚をして2年、自身の宗教的な問題や、春一の教師の仕事も落ち着きを取り戻し、そろそろ子供でも、と考えていた2人を襲ったのは、そんな病魔だった。
「若年性アルツハイマーだな。進行度は初期段階」
「なんとか……できないんですか?」
真剣な表情の2人。
そこには一人だけ取り残された春一がいた。
若年性アルツハイマー?そんなバカバカしいことあるわけないだろう。ていうか誰だよその医者。
と、思う反面、どこかでその病気を認めてしまっていた自分がいた。
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