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父さん達はまた楽しそうに2人にしかわからない会話を始めたので、「ごちそうさまでした。ありがとうございました」と言ってカバンを抱えて部屋に戻る。
由実さんが「さっさとお風呂入ってや!」と私の背中に投げつけてきたけれど…
お風呂に入って、宿題に取りかかり始めたのは10時まわっていた。
色んなことが頭をぐるぐるして集中できない。
「愛ちゃん…いるかな」愛ちゃんの番号を押す。
「この電話は留守番電話サービスになっております」機械の声がして、私は電話を切った。
愛ちゃんはバイト中なのだろう。
利佳子にもメールするつもりだったが、携帯をカバンにしまい、私はそうっと部屋を出て、玄関の鍵をゆっくり回し、音を立てないように、外に出た。
表階段は音が響くので裏の非常階段から 下に降りる。
「寒っ、風キツいな」
もう一枚、何か羽織ってこなかったことをちょっと後悔した。
海の方は真っ暗で、 ちょっと怖いけれど、波の音は穏やかだ。海釣り公園まで 歩いてすぐ。
公園の中のベンチに腰を下ろして、海を眺める。対岸の観覧車の明かりと街の明かりが星のように光る。
まだ、父さんと母さんと愛ちゃんと暮らしていた頃はあの観覧車によく乗った。最初は高いのが怖くて、父さんにしがみついてよく泣いていた。愛ちゃんはわざと観覧車を揺らして私を怖がらせ、母さんに叱られていた。
私はまだ15年しか生きていないけれど、時々もう100年も1000年も生きたような気がする時がある。
どう、足掻いても4人で暮らした頃には戻れないなら、私がこれから生きていく意味はあるのかな。
私に未来はあるのかな。
神様にお祈りすることもなくなった。今、お祈りするとしたら、私は何を祈るのだろう。
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