第1章~冬の海~

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ああ、頭がガンガンする。体の節々は痛いし。11月の夜に3時間も海を見て風邪をひいたなんて、ロマンチスト通りこして 大馬鹿だ。熱があろうと学校は休めない。井上家ルール。 「メールこないからさ、寝てしもたんかなぁってあたしは、遠慮したんよね。まさか3時間も冬の海見てたって?アホやね~ホンマアホやわ」 利佳子はシャーペンを回転させながら、呆れ顔だ。 「ロマンチストなんよ。風邪は想定外やけどさ。アホアホ言わんといてよ。ホンマに自分がアホに思えるやん。」 「だって、晴、アホやもん」 利佳子と私のやり取りを聞いていた、みっちゃんが言う。 「晴香、熱図ったん?」とみっちゃんが私の額に手を当てる。 「熱いやん。朝、家で熱図らんかったん?」 体温計なぞ使っているところを発見された日には、父さんがどれだけ暴れるか、想像したくない。 「んー家出る時は、熱なかったからさ。学校来る途中に上がった」 「そんな都合のいい熱出るんやったら、あたし毎朝出すんやけどなぁ。海見てたって?利佳の言う通り、アホやわ」 みっちゃんは私の頭をヨシヨシしながらも、笑いをこらえられないようだ。 「井上さん、田中さん、高橋さん 授業聞かないなら退室して下さいね。扉はあちらです」 シスターにも体育会系っているのねと思わずにいられない人。英語担当のアメリカ人シスター・ヨゼフィーナがから私たちは退室勧告を受け、「申し訳ありませんでした!」と口々に言いながら退室する。 シスター・ヨゼフィーナの退室勧告は絶対で、逆らえば生活指導行きになる。 「授業終わるまで、廊下で待ってなアカンのよね」とみっちゃん。 「そら、そうよ。外に行っていいんなら 私、何回でもボイコットするで」と利佳子。 「…ごめんなぁ」と 情けない声の私。 「晴はアホやけど、悪くないで、熱図っておいでよ。今のうちに」 「あたしが保健室行ったら、2人共ついてくるんやろ?」 「もちろん!口実ができるやん!」とみっちゃんと利佳子はニヤリと笑った。 「38℃6分やで、帰ったほうがいいんやない?」 みっちゃんは気を使ってくれるが、早退という言葉も井上家ルールにはない。 「あたし、家まで送ってあげるよ。そしたら晴、いらん誤解受けることないやん」 利佳子は頼もしいんだけど、学校をサボらせることは忍びない…
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