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「利佳もみっちゃんもありがと。大丈夫や。一人で帰れるし。堂々と学校サボれ…」
そこまで言って、言葉に詰まった。帰ったところで看病してもらえるわけではなく、一人ぼっちで、父さんが帰ってくるのをビクビクしながら待つくらいなら、無理して5限まで学校にいた方がいいんだ。でも、熱が上がって来ているのか、フラフラして自分の体も支えるのが辛い。
「晴…?」利佳子が私を覗きこむ。
ふいに泣きそうになる。
「明日は土曜日やし、学校休みやん。今日と土日寝ていたら 月曜日バッチリ治るから、そんな心配せんといてや」
明るく言ったつもりだったが、利佳子とみっちゃんは心配そうな目で私を見ている。
「晴香、全然大丈夫やないんやない?晴香が話したくなかったら、私ら無理に聞こうとは思わん。晴香さ…高等部に上がってから、おかしいんよ!心配してるのは利佳だけやない!」みっちゃんは悲しそうだった。
みっちゃんー高橋美波は、小学舎の時から一緒で、 今までクラスは変われども私には利佳子とみっちゃんはなんでも話せる友達だった。だけど、姉妹のような利佳子とは違い、利佳子に話せないことは、みっちゃんにも話せない。
高等部に上がってからの私の変化に気がついたのはみっちゃんもだったんだ…
「晴、一人で帰れるんやね?廊下は寒いよ。熱上がってしまうやん。ちょっと待っててね。」利佳子は職員室のある旧校舎に駆けていった。
「晴香、あたしのカーデきてな。利佳何しに行ったんや」
みっちゃんが、自分のカーデをかけてくれる。ごめんね…
旧校舎の方から歩いてくるのは、利佳とシスター・秋津だ。
「井上さん、大丈夫?熱がここまで高かったら欠席しても構わないのに…お父さんがご心配するわ。」
心配少しはして欲しいものだけど…
それから、駅までは送ると言う利佳子達を授業に戻らせ、どうやって家までたどり着いたかは覚えていない。由実さんは今日は夜勤だから、まだ家にいた。玄関で倒れ込んだ私に色々呼びかけたらしいが聞こえなかった。
立てない私を抱え、 ベッドまで運んでくれ手早く着替えさせてくれた。
目が覚めたら、ポストイットに「お鍋におうどんがあります。冷蔵庫の下にポカリがあるから飲んで下さいね。父様は今夜飲み会で遅くなるそうです」と由実さんからの伝言がスタンドライトの台に貼られていた。風邪薬もあった。
父さん遅いんだ… それだけで、少し安心してまた眠ってしまった。
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