第1章~冬の海~

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「15歳なんやけどな。可哀想にこんな傷を作って…」 日曜日は、父さんと由実さんと一緒に、 ごミサに出かけるのが我が家の習慣。 利佳子達の家族も同じ教会だから、利佳子のパパから顔のことを指摘されたら、父さんは上手く誤魔化すんだろう。 「こんな顔で人前出るのは勘弁やわ」 多分、風邪は明日には、くしゃみと咳くらいで治まる。 日曜日は、やっぱり行かないといけないかと考えると気が重い。マクワガン神父様にも何て答えよう。 「あ、そうや」 押し入れを開ける。 「神様封印グッズ」と書いた、中くらいのダンボールを下ろす。 スタンドの明かりの中でもはっきりわかる。 私が神様もマリア様も信じなくなった時に、メダイや御絵、 ご像も…ありとあらゆる神様に関わるものをこの箱に詰め込んで二度とあけないと誓ったのだ。 古びたロザリオが手に触れる。このロザリオは私が11歳で堅信を受けた時、信仰上の母役(代母という)をしてくれた、利佳子のママ、真知子さんから頂いた。「古いけど、たくさんの人の祈りが入ってるんよ。晴ちゃんの祈りが 取り次がれるようにね」と。 (利佳子の代母は、母さんが引き受けた) このロザリオで「ママとパパが仲良くなりますように。」とか「利佳とケンカしました。マリア様仲直りさせて下さい」とかいろんなことを祈った。「シスターになりたいです」とも… だけど、神様は私の祈りを聞き入れては くれなかった。愛ちゃんがこの家を出た時、私はこの箱の中に、たくさんの思い出も入れて封印した。 十字を切って、ロザリオを握りしめ目を閉じた。 「神様…あたしを助けて下さい…」 もちろん 「信じていませんから、無理なら結構です。」と可愛げのない言葉も付け加えたけれど…
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