プロローグ~波の音~

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…波の音がする。 目を薄く開けようと するけど、瞼の激痛でうまく開かない。 今、何時なんだろう?私は痛む左腕を伸ばし、ベッドの上に置いてあるはずの目覚まし時計を探す。 硬い目覚まし時計の感触が手に伝わらない。つまりそこには ないってこと。 「痛っ」足元に何かがあたっている。 身体中が痛い。でも朝までには、何事もなかったかのように 朝ご飯のテーブルについていなければ駄目。 少々パニックになりながらも一度深呼吸してみる。「痛い… 」叫びそうになるが 声は出せない。出してはいけない。 「う…何であたし、制服のままなん?」 呟いて思い出した。昨日の夜にあったことを。私は左腕で制服のリボンが破れていないか、スカートのホックはちぎれていないかを確認する 。 「大丈夫やな…大丈夫…」 ベッドに手をついて、ゆっくり上半身を起き上がらせて見る。真っ暗で何も見えない。足元に当たっている、何かを拾おうと手を伸ばすと、形と感触からして、それは携帯だった。 「またやん。カバンの中に入れておいたのになぁ」 痛む右目の瞼をゆっくりゆっくりあける。 携帯の光が眩しい。 「4時15分…」 私はもう一度眠ろうか?とも考えたが、 明日、学校に行けるかは私の顔次第なのだ。鏡がみたい。 スタンドの明かりだけつけて、足元に散らばっているだろう カバンの中身を探す。 闇に目が慣れてきた。足元は化粧ポーチが転がり、利佳子にもらった新しいグロスが踏み潰され、教科書やノートがあちこちに散乱している。 「グロス押し入れにしまっておかなアカンかったよな。」利佳子とお揃いのグロス。それをつけることはないのだけど、 持っているだけでも 私には御守りのような安心感があった。 薔薇の形をした手鏡は、カバンのそばに 転がっていた。表面は吹き出たグロスでグチャグチャになっている。 シーツに手鏡をこすりつけて、鏡を開く。 「あはは…今日学校行かれへんやん。」 私の顔は瞼が青く染まり、唇の右端がキレて赤い血がこびりついていた。 「いつものことやん いつものこと…」 涙が一筋流れ落ちる。 私は声を潜めて、ひとしきり泣いた。 朝が来なければいいと願いながら…
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