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2時間目に隣のクラスの真里が体育のバレーで突き指して、保健室で処置してもらっている時に、私がシスター2人がかりで運ばれてきたのを、利佳子に話したということだ。
「真里は大丈夫なん?」
利佳子に額を軽くデコピンされる。
「あのな、重傷なんは、晴やで。」
「んー利佳、お願い」
「何?」
「鏡、見せて欲しいのん」
利佳子の顔が一瞬ピクンとなって、泣きそうになるのがわかった。利佳子は知っているから。
「そんな急に美人にはならへんよー はい、これ」
利佳子は自分のアリエルの手鏡を渡してくれる。
明らかに目は笑っいない。
だって産まれた時から今までずっと一緒だもんね。
鏡を見ると、唇の端に小さなバンソウコが貼ってあった。目の上にも大きなバンソウコ。ちょっと目立つ。家に帰って何か言われたら…
「顔から転んでも、そんな傷だらけには ならないと思うんやけどね…井上さん、 足も打った?」
足…?ああ、太ももにある痣のことだ。
「少しだけ、太ももとお腹見せてもらったわ。井上さん…?」
何で何で、勝手に見るんだと処置してもらったことも忘れて 私はただシスター木ノ下が腹立たしかった。「あの!…」
「晴、大丈夫ならもう帰ろ?」
空気を呼んだ利佳子からの助け船。
怒りの風船はぷしゅっと縮んだ。
「ありがとうございました!もう大丈夫です。利佳、帰るよ」とカバンを掴んで 保健室を飛び出した。
保健室から下駄箱まで走って走って、利佳子から肩をつかまれた。
「待ってって。そんなにバタバタ走ることないやん」
利佳子は息を切らせている。
「あ、ごめん…つい カッとなったん。ごめん…利佳こそ、ずっとついてくれたのに」
「あたしにごめんはいらんよ。ねぇ、晴 最近ほんまにおかしいんやで?自分でわかってる?」
利佳子が私の目をはっきり見ている。本当のことを言えたらどんなに楽なんだろう。
利佳子と私は誕生日が1ヶ月違い。私が12月20日で利佳子が1月21日。元々、母さん同士が同じ教会の友達で、お互い子供が産まれたら幼児洗礼を一緒に受けて、一生の友達でいられることを神様に願ったらしい。
私の洗礼名は「ベルナデッタ」マリア様は19世紀の終わりに貧しい羊飼いの少女の前に現れた。
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