水と大地のお嬢様

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 ──昔々。  あるところに、それはそれは美しい女性がいました。  深く色付いた緑の森に囲まれた広大な湖のほとりで、目を閉じて風を感じるように静かに佇んでいました。  そんな女性に、一人の男性が近付いて来ました。 「何をなさっているのですか?」  男性の問いに、 「風を感じておりました」  と女性は答え、見た人が誰しも見惚れるであろう微笑みを男性に向けました。 「あなたの名前を教えて下さいませんか?」 「私は、リーンと申します。この大地に住まうしがない精霊です」  それを聞いた男性は、この地に人間の住まう国を築いても良いかと尋ねました。  それに対し、女性はある条件を付けました。 【森と湖を大切にすること】  という、たった一つの条件を。  男性はそれを喜んで承諾し、この地に相応しい、とても美しい国を建てました。  精霊の名前である、【リーン】と国に名付けて。 .
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