7人が本棚に入れています
本棚に追加
鉤裂きを上手く誤魔化し、彼に渡すと、彼はとても喜んでくれた。
「お前スゴい! お前天才!!」
ほんとに小さい子供のように喜んでくれる。
私は嬉しくなって、はしゃいでいる彼を眺めていた。
そこに、
ゴロゴロゴロ
空が怪しい音を立てて、不機嫌な顔の不吉な雲を連れて来た。
夕闇が迫る空をその雲が覆い、いつもよりも早く闇を呼び寄せている。
私が空を見上げていると、
「ここにおったんか! 捜したぞ!」
そんな声と共に、彼のパンツと同じ模様のキャミソールを身に付けた、女性なら誰もが羨むプロポーションを持つ女性が現れた。
「母ちゃん!!」
彼のお母さんらしい。
何人も産んでるのに体型が崩れてないのは、やっぱり鬼だからだろうか?
そんな的外れな事を思う。
彼は母親を見るなり、
「あのね、あのね、この人間がね」
きっと私を紹介しようとしてくれたのだろう。
しかし、
「なんだ。飯にするとこだったのか? でも骨が喉に引っ掛かったら痛いからな。母ちゃんが骨を取ってやるから待ってろ」
母親はそう言うと、彼も私も声を発する暇もなく、私を捕らえていた。
最初のコメントを投稿しよう!