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この時はまだあたしにとって、ただの副店長でしかなかった。
管理職のわりにはくだけていて親しみやすく、かっこよくはないが憎めない感じの副店長は他の従業員からも人気があった。
きっとその時の副店長にとってあたしは、慕ってきてくれるうちの1人でしかなかっただろう。
あたしはいつも遅番だった。
昼間に出勤をして夜まで仕事をする、そんな毎日だった。
副店長もたまに遅番で、たまに早番だ。
ある日、副店長があたしより先に帰る時、黙々と仕事をしているあたしの近くに寄ってきた。
-飯田さーん、先に帰るね!
ただそれだけ。
ただそれだけなのにすごい嬉しかった。
機械的に出勤し、帰っていく職場で、わざわざあたしの名前を呼んで帰ってくれた。
それが何よりも嬉しかった。
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