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そして、全員が本名を名乗り終えた
中には、ハイゼンベルク中尉のように、なかなか名高い犯罪者もいた
恐らくは、その技能を買われ、エリスのように連れ込まれたのだろう
極悪人、と呼ぶほどの者はいなかったが
特務小隊が、独特な雰囲気をもつ理由の一つが、明らかになったようだ
《さて…では、バレット》
《はい》
エリスは、意を決したように、口を開く
《バレット改め、エリス・ルーウェルト中尉です。隊長はすでにご存知ですが》
その言葉に、何名かは驚きの表情を浮かべた
元裏社会仲間だ
ハイゼンベルク中尉などは「道理で……あの腕前か…」と、呟いていた
そしていよいよ、クロイツの番だった
《残るは私だけだな。では、改めて諸君に名乗ろう》
特務小隊の隊員達が、いや、無線を聞いているパイロットまでもが、息を飲むのを感じた
伝説的な狙撃手にして、軍人。その名前から半生、出生まで、全てが謎に包まれていた陸軍の英雄の名が、明かされる
《私はアーチャー改め、クロイツ……クロイツだ。ラストネームはアーデルホルン、ルーウェルト、ティアード、色々とある。だが書類上、私の今の正式なラストネームは、ルーウェルトだ。クロイツ・ルーウェルト中佐、以後、そう呼んでくれ》
我ながら、意味不明な自己紹介だった
だがそんな台詞に、酷く動揺するものが一人いた
クリスだ
《た…隊長!!クリスです!!!ルーウェルトとは……もしや!?》
そのクリスの台詞に、また周りの何名かが「あっ」と声を上げた
クリスは、クロイツのラストネームがアーデルホルンだと知っている。そしてそれを知らぬ周りの人間もたった今、気付いてしまった
エリスとクロイツが、同じラストネーム、ファミリーネームだということに
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