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クロイツの爆弾発言(色々な)によって、機内が微妙な雰囲気に包まれた時
《間もなく到着します。これより当機は、強襲揚陸艦ラタトスクに着艦、会場到着まで、しばし優雅な船旅をご堪能下さい》
《…ラタトスクが来てるのか!?》
誰かがそう叫んだ
《了解、機長、会場ではくれぐれも頼むぞ。豪勢な出迎えが期待出来るからな》
《踊る前に退場など、願い下げです。何が何でもお連れいたします》
《あぁ》
クロイツは短くそう応えると、窓の下を眺めた
強襲揚陸艦『ラタトスク』
直訳で『走り回る出っ歯』の名を持つその船は、神話に出てくる世界樹ユグドラシルに住む栗鼠の名だ
可愛い名などと言われるが、中身は違う
神話のラタトスクが、ユグドラシルの枝と根元に住む2人の神々の間に立ち、喧嘩を囃し立てたように、この強襲揚陸艦ラタトスクも、なかなか厄介な船だ
最大排水量7万トンという、一見すると巨大な空母にさえ見えるこの船は、艦内、艦上に数十機ものヘリを搭載出来る上、艦尾射出口からは、10隻以上の小型高速揚陸艇を放出する
更に船自体にも、艦対空ミサイル、20mm自動対空機関砲、対潜ミサイルなどを搭載している、ルーウェイの誇る超弩級の艦船だ
大陸最強を誇る海軍と、制海権を確保する絶対的自信がなければ、こんな船は造るまい
《ほぉ、フレースヴェルグも見えるな》
《えっ?………本当だ…》
戦艦フレースヴェルグ
こちらもまた、神話に出てくる鷲(正確には鷲の姿をした巨人)の名だ
戦艦と聞くと、古めかしいイメージがあるが、こいつは違う
フレースヴェルグは、最新鋭のイージスシステムはもとより、ECMシステム、ECCMシステム、衛星とリンクした自動照準装置に、火気管制システム、
25ミリ対空機関砲に、艦対空ミサイル、対艦ミサイル、速射砲から、様々な特殊砲弾を撃つ為にライフリングを無くした42cm三連砲など、正に海上の近代要塞と呼ぶに相応しい戦艦だ
これが、ルーウェイ海軍の自信の源と言ってもいい
『奴らに持って行かれず、幸いだな』
これは心からの本音だった
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