舞踏会~ラストダンス~

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フレースヴェルグ艦橋内部にある、会議室のような一室 ブリーフィングルームとなってはいるが、その戦艦とは思えない華美な装飾は、シャンデリア城の豪華な食卓を、小さくしたかの如き様相を呈していた 兵器やシステムのみならず、このようなところにまで、予算をつぎ込んでいるとは、流石にクロイツも知らなかった 故に、扉を開けた瞬間、呆然となった 絵画に燭台、赤塗りのテーブルに、細かな彫刻に彩られた椅子 一言で言えば、無駄、もしくは、無意味、と、クロイツは思っている訳だが 『ま、他の軍や部隊のお偉方を招くのには、こういうのも必要なのかもな……』 そう自分に言い聞かせ、既に席についている将校達に敬礼してから、末席に着いた のだが 「中佐、貴官の席はそこではない、こちらだ」 突然、上座にいた海軍大佐が、そう言ってきた そして示した席は、一番奥の司令官の椅子、その右手前二番目。本来、将官クラスや参謀などの幕僚が座るような場所だ 「……恐れ多いことです、何卒、末席に」 「ならんよ。貴官は今作戦に置ける前線指揮官であり、我々は貴官の指揮する部隊を支援するのだ。そのような末席、似つかわしくはない」 「……………………」 思わず、エリスと顔を見合わせた エリスはと言えば「いんじゃね?」とでも言いたげな顔をしている まぁこいつには、上官よりも上座に座るというのが、本来どういうことか、なんて分かるまい 軍法で言えば(大袈裟だが)、不敬罪にさえ該当しかねないのだ
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