舞踏会~ラストダンス~

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「そう気にすることはない。ここにいる者、また、これよりお見えになる方々も、皆、貴官の役目がいかに重要で、また困難かを知っている。文句など、誰一人言わぬさ」 「……そう仰って頂くのは、大変恐縮ではありますが、本官の任務は、陸軍のみならず、海、空軍の支援があって初めて実行出来るのです。私1人、また私の率いる部隊だけでは、岸にすらたどり着けないでしょう」 「それは最もだ。だがな、中佐、岸に辿り着いてから先の事は、貴官と貴官の部隊以外に、出来る者はいないのだ。陸海空軍の上陸支援部隊は、数多くいる。だが陸軍は多数ある島々の地上要塞施設制圧のために分断され、海空軍は陸上戦闘では到底陸軍には及ばん。故に、本丸を攻略する貴官らこそ、主役たるに相応しいのだよ」 「………恐れ多いことです」 彼らの言うことも分かる。確かに、海軍も空軍も、要塞の制圧自体は出来ない とは言え陸軍も、輸送手段が海路と空路しかない現状では、数にも限度が出てくる 最も多くの兵が必要となるのが地上戦なのにも関わらず、数が揃わない しかも本丸をその限りある兵力で攻略しなくてはならないクロイツ達は、なるほど、映画ならば主役級だろう だがこれはクロイツから言わせれば、死兵、だ だがまぁあまり反論しても、結果は変わりはしない 座る場所で任務が変わる訳でもない まして、成否などには、微塵の影響も及ぶまい クロイツは一度だけ、聞こえないよう小さく溜め息をついて、指示された椅子に向かい、そして座った 背後には、エリスが待機している
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