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そして軍議が終了し、解散となった。各々が席を立ち、持ち場に戻る
クロイツはその前に、席を立った空軍元帥、ラーゲルクヴィストの元へ向かった
「ラーゲルクヴィスト元帥閣下」
「ん?」
呼び止められたのが意外だったか、ラーゲルクヴィストは怪訝そうな表情を浮かべた
「あぁ、ルーウェルト中佐か。私に何か?」
「はい、閣下に、敵航空戦力に関する事で内々のお話が」
「ふむ…………ならば少し待て。皆すぐに持ち場に戻る。そうすればこの部屋も空くだろう」
「分かりました」
ラーゲルクヴィストの言葉通り、二分程で部屋は空になった
「さて、これで大丈夫だろう。で、話というのは?」
「はい、閣下、失礼ながら、ティアード大将をご存知で?」
「勿論。彼のお陰で、我々はこれだけの戦力を半日足らずで集結出来たのだから」
「では、ティアード大将が敵に、我が国の技術情報を流していたことは?」
「…なに?」
やはり、知らなかったか
「ティアード大将は、敵に溶け込み、その情報を得んがために、我が国の技術開発情報を流しておりました。技術開発部門特別顧問としての地位を利用して」
「待て、そんな話は聞いていない。彼にそんな許可は出していないはずだ」
「だからこそ、言えなかったのかと。ティアード大将は私の父の一件で、敵から疑われておりました。信用を回復するには、敵のみならず味方も騙さざるを得なかったのだと思われます」
「…………それは、事実か?」
「誓って事実です。私はティアード大将が亡くなったその日に、そのことを教えられました」
「なぜ早く言わなかった!?」
「事ここに及ぶまで、私には敵味方を識別する術がなかったからです。例え、元帥閣下や大将であっても。事実、陸軍元帥は敵であったと伺っておりますので」
「………確かに、それを言われると痛いな。私とて、疑心暗鬼に駆られていた。さっきのは失言だ、許せ」
「いえ…」
これで、なんとか話は聞いて貰えそうだ
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