舞踏会~ラストダンス~

32/50
前へ
/156ページ
次へ
クロイツがエリスを引き連れてラタトスクに戻ると、すぐに若い士官に艦内へと案内された 艦内には陸海軍の将兵が入り乱れ、せわしなく動いている この期に及んで、何をそんなに慌てるのか クロイツには甚だ疑問であったが、別部隊の人間にまでとやかく言うつもりはない 中佐の階級章をつけたクロイツを見て、慌てて敬礼してくる連中に答礼しながら、マカロフ、改めヴェデルニコフ達の待つ場へと向かった そしてたどり着いたのが、士官休憩室だった 「まさかとは思うが…」 「はい、なんでしょうか」 「この場を、我々だけで使うのか?」 「艦長から、そのように伺っておりますので」 案内をしてくれた士官は、そう告げた 「陸軍の人間に、こんな待遇をしてくれるとは思わなかったな」 「今は、陸軍も海軍もありませんからね。艦長曰わく、我々はルーウェイ軍であり、連合軍の一員、だそうです」 あのシラキ大佐、なかなかの人物のようだ 「分かった。艦長に感謝すると伝えておいてくれ、あと、他の連中から文句を言われたりしたら恨む、ともな」 「分かりました。では、本官はこれで失礼致します」 「ご苦労」 敬礼、答礼のやりとりをして、士官はその場を立ち去った 残されたクロイツとエリスは、部屋の中で待機していた連中のもとへそのまま向かった 「隊長、ルーウェルト中尉、お戻りになりましたか」 「ヴェデルニコフ中尉、エリスで結構です。隊長と同じ姓ですから、ややこしいですし」 「いや、奥さんのことをファーストネームで呼んだりしたら、隊長に睨まれそうで」 「ほぉ、私がそんなに心の狭い人間だと、そう言いたいのか、ハイゼンベルク中尉」 「お兄様と同じ姓だなんて………私は絶対に認めません」 「認めて頂かなくて結構です。法律と隊長が認めていますから」 「た……隊長!!ご結婚は本当に両者の同意の上なのですか?」 「いきなりとんでもない発言をするものだな、イザナミ。私が無理矢理結婚させられたと言うのか?」 「ないと思いますよ、隊長に限って」 「ルフェーブル中尉……淡い希望を打ち砕かないで下さい…」 「何の希望だ」 相も変わらず、こいつらには緊張感がない 修羅場をくぐりすぎて、麻痺したのかもしれないが
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1254人が本棚に入れています
本棚に追加