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「兄様を投げ飛ばすって、まさか比喩じゃないなんてことはないですよね!?」
「クリス曹長、今は職務中、まして戦場へ向かう道中だ。発言には気を使え」
「あっ……申し訳ありません、スターレンス中尉」
「…まぁ、クリスはまだここに入って日が浅い、私を隊長と呼ぶのに違和感があるのも致し方ないだろうが…慣れて貰わんとな」
「以後、気をつけます……それで、さっきの話ですが」
上手く話をそらせたと思ったが、現実はそんなに甘くなかった
「あぁ……まぁ比喩ではないな」
「では……本当に隊長を?」
イザナミがエリスとクロイツを交互に見ながら言った
まぁどう見たって、体格差は明らか。エリスがクロイツを投げ飛ばすなど、想像すら難しいのだろう
「流石、規格外」
「ハイゼンベルク中尉、少々甲板までお付き合い願えますか?」
「おや、デートですか?」
「えぇ、貴官が海水浴しているのを私が上から眺めているなんてどうでしょう」
確か、この艦は甲板から海面までかなりの高さがあった気がするが
「実演指導というのが、一番効率的かと思いますし」
最大船速で走る船から落とされたなら、待っているのはスクリューによる粉微塵の末路
仮にこの艦のスクリューに巻き込まれずとも、後続の艦に揉まれるのは明らかだ
しかもそれを、エリスは至って真剣な表情で言っている
流石のハイゼンベルクも、額に冷や汗を浮かべているようだ
「………隊長」
「なんだ?」
「紙とペン、それからいくらかの時間を頂いてもよろしいですか?」
「無用だ。そもそも、エリスが待ってやる道理もない。私も、別段止める気はないしな」
「隊長!?まさかデートと言ったのをお怒りですか!?」
「ハイゼンベルク中尉、余程、貴官は私を度量の小さい男と思っているらしいな………ヴェデルニコフ、ルフェーブル、スターレンス」
「「「はい」」」
「私はしばらく休む。その間に起こった事は、私は一切関知しない。海軍に迷惑をかけない程度に頼む」
「「「わかりました」」」
「た…隊長ぉ!?」
この緊張感の無さは、もはやどうしようもなかった
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